スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
黒の少女
黒い空の下、黒い部屋、黒い服。黒い髪、黒い瞳。彼女は黒を好み
黒だけを身近に置くことを赦した。
毎日繰り返される黒い生活。
それが幸せと思い至るには彼女は若く弱い。

光彩を染める色は全て黒。
鏡の中に映る彼女は黒い塊でしかない。

何故だろう。世界で黒を模していたのは彼女だけだった筈なのに。
いつから世界が軋んだのだろう。軋んだのは彼女の方かもしれない。

彼女が黒を好み身を寄せていた黒はいつの日か彼女をとり囲んだ。
彼女の周囲には雨後の飛瀑の様に黒が溢れ、そして水底を望めない
深い黒い滝壷へ呑まれていく。

彼女は飽いていた。黒にそまる世界に。空に。部屋に。自分に。
全てを壊すほど彼女は弱く無く、全てを捨てるほど彼女は強くない。

幾年も黒の中で過ごす彼女。その日も黒で始り黒へと収束する筈だった。
石で造られた息の詰まる黒い塊から彼女の棲む黒い小さな彼女だけの
世界へと歩みを進めるその最中、彼女の黒い風景に火が灯る。

歩きなれた石畳の上に真っ赤な飛沫。まるで真紅の星々が輝いている様に
美しく、彼女の心をとらえて離さない。
彼女にはそれが何なのか理解出来ない。ただ美しく、彼女を魅了する。
赤い飛沫が何処からきたのだろう。
彼女は見渡す。黒い大きな鉄の塊。鉄の塊には扉があり、ひしゃげていた。
扉の僅かな間隙から赤い液体が零れていく。

彼女には衝撃だった。深い赤。飛沫の様に美しい真紅でこそ無いが
呑まれる様な深紅がそこにはあった。
彼女の心はさらに深く捕らえられていく。
手に取りたい、その衝動に駆られ彼女は鉄扉に近づく。
鉄扉の向こうに赤い源泉を見つける。
そこに在ったのは歪んだ黒い物だった。

赤い液体は黒い物から溢れている。
それは暗く深い穢れた森の中で見つけた美しい泉のように
彼女の目には映った。

彼女が彼女の世界に存在しなかった深紅を手にしようとする刹那
鳥の嘶きが激しく響いた。
彼女は竦み、伸ばしていた手を戻す。

彼女の周囲はいつからか人型の影絵で埋め尽くされていた。
影絵が何かを彼女に告げている。しかし彼女の耳には届いていない。
無理もない、彼女の五感全ては深紅にそそがれているのだから。

黒い絵画の赤い雫、その場から剥ぎ取られた彼女は
影絵を屹度睨む。
しかし欠乏した感情の中に芽生えた小さな怒りもすぐに
霧の中へ消えた。
なぜならば彼女は識ったのだから。
あの美しい深紅を手にする方法を。

彼女は求め続けるだろう。
その四肢が活動を終え安息を得る日まで。


あの深紅を。



スポンサーサイト
【2008/01/13 19:34】 | 書き物 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
<<久しぶりに投稿 | ホーム | 愛犬を殺されたロシア男性が友人を殺害>>
コメント
これは、あれですね。
そういうことを言いたいのですね(*ノωノ)
あも国語出来るので、すぐわかりました!
ヨユウ!(゜o゜;;
【2008/01/14 00:06】 URL | あも #6nvdKFQ2[ 編集] | page top↑
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://motomuraai.blog51.fc2.com/tb.php/19-2c416c33
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。